2017/05/15

青いとり保育園「不当解雇」事件裁判 判決報告決起集会


2017年5月13日の夜、「青いとり保育園『不当解雇』事件裁判 判決報告決起集会」を開催しました。
4月19日に京都地裁が6人の原告の訴えを棄却して以降、原告、弁護団、支援団体を中心に議論を重ね、大阪高裁へ控訴することを決め集会の日を迎えました。
厳しい判決結果に屈することなく、高裁でのたたかいを決意した原告を励まし、支援しようと120人を超える関係者の方々に参加いただきました。

集会の冒頭、支援団体を代表して京都総評の梶川議長に開会挨拶をいただきました。
その後、この間のたたかいの経過を紹介した基調報告(下記参照)、弁護団から判決内容と青いとり保育園40年の歴史と実践についての報告がありました。
また、青いとり裁判闘争とともに、京都市行政の保育責任を問う「市営保育所移管問題」に取り組んでおられる保護者などからも連帯の発言をいただきました。

最後に原告6人から高裁でのたたかいに向けた決意が述べられました。
裁判の結果は本当に不本意な内容で、悔しい思いがいっぱいある。
しかし、一方で京都地裁は、保育を受ける子どもの健全な発達や保護者の利益のためには「保育の継続性」が必要であり、それを否定する「保育士の大幅な入れ替わりは好ましくない」と判断した。
これは、9回にわたる口頭弁論で原告や弁護団が主張してきたことが反映された。訴えは棄却されたが、青いとりでの保育実践と京都地裁へ提訴し奮闘してきたことに、改めて確信をもった。
厳しいたたかいではあるが、引き続き高裁でのたたかいに頑張る。

大阪高裁での裁判が具体的に始まるのは、秋頃になると思われますが、集会を機に裁判所内外でのたたかいと運動をすすめていきます。
原告を先頭に弁護団、支援団体が力を合わせ、高裁での逆転勝利をめざして頑張りますので、引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。



京都市立病院院内保育所「青いとり保育園」不当解雇事件裁判経過報告

はじめに
2015年3月末、青いとり保育園の保育士たちが、事実上の不当「解雇」となり、2015年7月3日に京都地裁に提訴。9回の口頭弁論を経て2017年4月19日に不当判決がなされました。その間、26回の京都市役所前宣伝・25回の京都市立病院前宣伝、25,553人分の京都地裁への公正な判決を求める署名、保育シンポ、ことりのおうちでの居場所づくりなどに取り組んできました。

ここまで取り組みを進めてこられたのは、多くの組合や市民団体、争議団、全国のなかまの支援、弁護団や大倉先生の支えがあったからこそでした。そして、なによりも原告6人が先頭に立って奮闘したからです。京都地裁では、とても悔しく、残念なことになりましたが、大阪高裁に舞台を移して、必ず勝利するために再スタートをする、そのための報告とさせていただきます。


1 「青いとり保育園」とは
「こどもを産んでも働き続けたい」という看護師の要求、そして病院側も、看護師確保の為には必要だと、京都市立病院の院内保育所として1977年3月に設立しました。
認可保育園ではありませんでしたが、配置基準や職員の給与、保育料についても、京都市の認可保育園基準で設定し、0歳から6歳まで45人定員の継続した保育を保障してきました。さらに院内保育所ということで、その当時まだ一般的ではなかった産休明けの保育だけでなく夜間保育、急なオペなどで迎えにこれない看護師保護者の対応など、きめ細やかな保護者対応も行ってきました。当時は、病院が設置した運営委員会が保育所を運営し、市立病院で働く職員が京都市の公務員であるなか、院内保育所ではたらく職員は非公務員でしたが、認可保育園に準じた運営であったため、青いとり保育園で働く職員は、安心して働き続けることができ、経験をかさねることで、専門性を磨きよりよい人的環境=職員集団をつくりあげてきたのでした。

2 転機 ピジョン社への委託
京都市立病院の独立行政法人化に伴い、外部委託方針がだされ4年間の契約で、2011年4月に(株)ピジョンハーツに業務委託されることになりました。委託先選定に際しては、「職員の継続性の確保」が重視され、ピジョン社も職員全員の雇用継続を約束。その際、京都市は低い委託金額を提示した事業者を第一次選考で落選させました。
職員の雇用は継続されたものの、営利企業の元で大幅な賃下げ、労働条件の低下を強いられましたが、ベテラン職員の献身的な努力によって保育内容を継続してきました。

3 事件 アートチャイルドケア社への委託
4年後の2015年、「子ども子育て支援新制度」における事業所内保育事業として、地域から15名を受け入れ60名にすることで、2014年に運営上限価格を9650万円として、委託先の募集をはじめました。この9650万は、60名の園児一人あたり158万の運営費で、常勤職員には年300万~400万程度の給与が支払える設定になっています。なお、ピジョンハーツ社での実績は45名定員で7000万。園児一人あたり160万でした。これに対し、京都市は上限価格を大幅に下回る6636万円を提示したアートチャイルドケア社を選定しましたが、これは園児一人あたり110万円の運営費設定になり、職員採用条件が一律に手取り16万程度という著しく低い水準だったこととあわせても、保育の継続性についてどのような考えがあったのかいまだ疑問です。

選定基準から、「職員の継続性の確保」について削除しましたが、応募書類には継続雇用する職員について記載する項目があり、審査においても配点されていましたし、選定手続においては、アート社は常勤職員全員の雇用継続を表明していました。しかし、それらをなかったことのようにして、ベテラン職員を全員不採用にしたことで、結果内定された若手の職員やパート職員は「自分たちだけでは青いとりの保育は継続できない…」と、アート社の対応に失望し採用を辞退しました。この経過の中で、保護者会はアート社や病院に対して説明を求めてきましたが、わずか3週間の見学で引き継ぎは完了し、2015年4月1日職員が全員交代し、職員間も連携がとれず、こどもの名前も覚えられない中で、保育が開始。

職員が定着せず保育の質の変化・低下によってこどもの心身にも影響がでるなどし、複数の世帯が転園・転職・転居を余儀なくされました。

4 提訴 このままではゆるせない!
「保育の質の確保と職員の雇用の継続はイコールではない」「経験年数と高いスキルは一致しない」「青いとりは公立保育所でも民間保育園でもないから、関係ない」と、言いきる京都市に対して、保育の質を職員集団で守ってきた職員の努力や経験を否定するのは許せないという怒り。そして、「子育て環境日本一」を掲げながら、大好きだった先生たちが誰ひとりいなくなった事態に混乱するこどもたちの心に寄り添うこともなく、「わたしのことが嫌いになったし、先生たちはいなくなってしまわはったんか?」と言わせてしまうような事を二度と繰り返してはいけない!…という憤り。そして、最も子どもと保護者と保育職員の人間関係が大事にされねばならない保育の場でこんなことが行われていいのかという理不尽さ。こうした保育士・原告の思いを多くの労働組合や市民団体の支援する中、8人の弁護団とともに、社会や司法に訴えてたたかおうと2015年7月3日京都地裁に提訴しました。

5 裁判 
「京都市と京都市立病院機構が、2015年度からの院内保育所「青いとり保育園」委託先事業者の決定にあたって、雇用継続に対する措置を執らず、原告らの雇用継続への期待権を侵害した」という趣旨で提訴しました。一般的な解雇撤回闘争、現場復帰を求める闘いではなく、この混乱をまねいた京都市と京都市立病院に対し謝罪を求めること。そして、安上がりの保育を許さず、青いとり保育園だけでなく、京都のそして全国の保育がより充実していくことを願い、すべての市民が大事にされる京都市政にかえていくために立ちあがった裁判は、8人もの弁護団の支えのもとで、合計9回の口頭弁論となりました。第8回口頭弁論では、6人全員が証人に立ち、一人ひとりのこどもの心に寄り添い、職員集団がひとつになってそれらを紡ぎ、成長を保障することが保育者の役割であり、だからこそ専門性が求められること。その専門性を高めるために継続して働き続けることが保障されてあたりまえなのだということをのべました。

6 青いとりの保育から「保育の質」を問う
待機児童が社会問題となる中で、「保育の量的拡大」の名のもとに規制緩和と市場主義が進められる中、保育の質と保育士の労働環境との関連性について、書かれた大倉得史京都大学准教授の意見書は、原告だけでなく保育に携わる者にとっても、日々の保育が可視化され、勇気づけられるものとなりました。80頁にもわたる意見書の中で、「子どもの最善の利益を保障する保育とはどんなものか」(第1章)ということに詳しく触れ、「保育所保育指針に則って、子どもの最善の利益を第一に考える保育運営が行われるならば、子どもと信頼関係を結んでいた保育士たちがある日を境に全員入れ替えられるなどという事態は断じてあってはならない」(第3節)一方、保育士の側としても、「たくましく育った子どもの人格の奥底に、自分と一緒に過ごした乳幼児期の経験が確かに根付いているのだということを感じられるとき、保育者の労苦は報われ、それがさらに強い責任感や向上心につながっていく。言うまでもなく、そうした保育者としての責任感、向上心、プロ意識、それと表裏一体となった喜び、願い、やりがいといったものは、「自分はこの保育園で継続して働き続けられるだろう」という前提・期待の上に初めて成立するものである。」だからこそ、「子どもの成長していく姿を見届ける必要性があり権利があるというのが、保育者としての責任ある仕事をしていく上での当然の前提である」(第4節)と書かれた事は、判決文にも採用されることになりました。

7 判決
保育園児の健全な発達にとって、保育の継続性が重要なものであり、そのような保育の継続性の観点から保育士が大幅に入れ替わることが好ましくないことは些かも否定されるものではない」と認めたことは重要です。しかしそれは、「子ども及びその保護者の利益で」あって保育士に雇用の継続を保障するものではないという極めて矛盾した判断を行ないました。
また、大倉先生の意見書に触れた上で、こどもの「発達は、職員の雇用の継続のみならず、人的、物的両面における保育環境の整備、保育事業に当たる保育士の姿勢や関わり方、保護者との連携の強化などといった、保育園事業全般にわたる総合的な観点から実現されるべき」と雇用の継続の大事さを肯定しました。それにもかかわらず、その保育者の専門性について深く理解しようとせず、京都市・京都市立病院に追随した、結論ありきの極めて矛盾に満ちた判断を行ったことは、まさに公正・公平な判断をすべき司法の立場を放棄したものにほかならず、断じて許すことが出来ません。京都地裁は勇気を持って、30年間青いとり保育園の保育士としてはたらいてきた職員の期待を認め、保育実践を評価し、もう一歩踏み込んだ判断を行い、雇用とこどもたちの保育を守る立場に立った判決を下すべきでした。

8 雇用と、保育を守るため! ~引き続きこころ一つに…~
この3月末、栃木の国立医療センター内の院内保育所で青いとりと同じ事態が引き起こされ、さらに今年度末には、全国の国立病院機構の病院内保育所の委託先変更が行われる可能性があります。全国111の院内保育所において、こども3634人、保育士などの職員1238人が委託先変更により重大な影響を受けるおそれが生じています。これに対し、4月10日の国会で、塩崎恭久厚生労働大臣が「大事なことは、保育士について引き続き同じ職場で勤務が続けられること」と答弁しました。

塩崎大臣の答弁は、働いている保育士やこどもたちのことを考えれば、至極当然の内容です。今回の判決の誤りは、この点からも明らかであると言わざるを得ません。
今回の裁判で、医師・看護師などの確保対策としても重要な役割を果たしている京都市立病院院内保育所青いとり保育園の保育士が一斉に交替するという異常な事態を二度と繰り返さないルールを示すことが京都地裁には求められていました。必要だったのは、委託先変更が仮にあったとしても、保育士などの雇用関係は引き継ぐというルールを作る責務が京都市や京都市立病院にあるという判断です。

国や自治体などが委託する場合は、労働者が働き続けられる公契約の制度が必要です。特に、福祉や保育・医療の現場では、委託先が数年ごとに変わる民間委託や指定管理者制度は国民や市民に重大な影響を及ぼすことになり、国や自治体の公的責任の放棄です。
青いとり保育園の保育士不当解雇事件では、これらのことに言及することが、今回の京都地裁の役割でした。行政追随の判決では、なんのための三権分立かが問われるのではないでしょうか。

私たちは、今回の京都地裁の判断の限界と不当性を厳しく指摘するとともに、地裁の判断の誤りを正すべく、大阪高裁に控訴します。同時に、裁判でのたたかいと併行して、
京都市の保育に対する公的責任や、保育労働者の雇用保障を求めるたたかいをはじめとし、雇用と保育を守り、すべてのこどもたちと労働者の権利が守られる施策の具体化を求めて、全力を挙げて闘います。引き続きのご支援よろしくお願い致します。